【第12回】「倉田清十郎という男:其の碌」
(更新日:2013.3.1)
夏からスタートした舞台「魔がさす」、もいよいよ本番を迎えることになりました。
「場当たり」と呼ばれる、照明や音響を含めた演出陣も一緒になっての入念なリハーサル。
この時点ではもう通し練習は終わっていて、きっかけが必要な場面のみの稽古。
つまり、物語を演じるのはもはや本番のみでした。
本番は四日間を通して合計7回。
初日は、日中リハーサルで夜からの本番が一本。
その後は「マチネ」と呼ばれる昼公演と「ソワレ」と呼ばれる夜公演が三日間。
普段のライブは基本的に一日一公演だし、一日二回まわしのライブだとしてもセットリストや演出は当然別の物。
それに対して同じ作品を今回なら7回、もっと言えば同じ日に2回行うという感覚が自分にとってまったく未知の領域でした。
楽屋の「鏡前」と呼ばれる席に役者ひとりひとりのスペースが用意されるのも新鮮でした。
ライブハウスの楽屋だと、化粧をするのも身支度をするのも、普段は同じメイクスペースにメンバーが順番に入れ替わる。だから、こんな風に公演中ずっと自分の好きに使える場所があるというのも面白かった。
そしてリハーサルが開始。
「魔がさす」の舞台である、撮影所の大部屋と呼ばれる楽屋がそっくりそのまま舞台上に生み出された中に立つと、本当にそこが現実の世界であるかのように思えた。
この場所でこれから行われる人間模様は、演劇という虚構の世界の中を絶対に飛び越えるものになる。
むしろ、そうしなければならない。
素足で踏む本物の畳のリアルな感触を踏みしめながら、そんなことをすごく感じました。
ひとつひとつ、入念に演出を確認してゆく。
照明が切り替わるきっかけ、効果音やBGMがかかるきっかけ。
ほんの些細なタイミングのズレで、たちまち舞台からリアリティが失われていくデリケートな段取りを丁寧に時間をかけて演出家と舞台監督が中心となって作り上げていきました。
もちろん俺は一役者。
これもいつもと違って、ワンマンなどの大舞台では自分も含めたメンバーが当事者となって進めてゆくこんなリハーサルを、指示に従って自分の役目をまっとうする立場でした。
自分の表現のみに全神経を集中させる感覚。
そして、いよいよ本番がはじまる!!
RYO:SUKE