【第13回】「倉田清十郎という男:最終回」

(更新日:2013.3.1)
「バイバーイ!!バイバーイ!!」

3日目ソワレ(夜公演)の最後の台詞が放たれ、最後の公演の幕が下りました。
全7公演の「魔がさす」の物語と人間模様は、たくさんの観客が固唾をのんで見守る中、無事に千秋楽を迎えることが出来ました。

この連載では、意図的に本番の舞台での出来事には一切触れないでいようと思う。
一公演、一公演の舞台上でしか行われなかったその時々のすべては、その場に居合わせた人の胸の中でいつまでも生き続けていると信じているし、劇団主催、脚本演出の江嵜大兄くんがその後言った「いつか『魔がさす』を再演したい。」という言葉を信じて、その時には一人でも多くの人が新鮮な気持ちで観劇出来るようにするために。

それでも言えるのは、演劇の公演は一回一回が本当に生モノだし、同じ物語でも舞台上でのすべては毎回毎回まったく違う物になるという事。
そういう意味ではバンドのライブと同じだし、台詞や演出という固定された要素が基本にある以上、それを超える生の感覚って逆に曲順の違いなどでそれぞれのステージの差別化をはかるライブを上回る生々しさがそこにはあったと思う。

この感覚は本当に自分の中で新鮮だった。
用意されたものに頼らず、本来の意味での自分の表現のみで勝負するってこういう事なのかと。
今、WING WORKSとして今年からライブ活動をスタートしているけど、この時の経験は確実に今の自分に大きな影響をもたらしてる。
歌うメロディも届ける歌詞も、もちろん自分自身が生み出した揺るぎない物。
でも、その一本一本のライブでしか感じられないこと、そのステージに向かうまでに感じた事、その日にステージの上で感じているものは、確実にそれぞれの瞬間にしか存在しないリアルだし、それを敏感にキャッチして即座に投げかける。
そのことで、一瞬一瞬を本気で生きるってことの大切さと表現したいし伝えたい。

そういうボーカリストになりたいと心から思わせてくれたのは、まぎれもなくこの経験でした。

たくさんのファンの子も公演を観劇に来てくれて、本当に嬉しかった。
みんなも最初は俺がどんな風になるのか不安だったと思うし、実際初日の初舞台を見た子から「こんなのリョヲ丞じゃない」って厳しい意見をいくつももらったんだ。
でも、演劇の「生」を感じ取ってくれたのか、千秋楽を見てくれた同じ子たちから「初日からの成長が見られて感動した」って声が届いた時には本当に嬉しかったし、表現の幅を広げられたことの手応えを感じて、先にWING WORKSとして出発することへの勇気がさらに湧いてきた。

演劇は本当に面白い。
音楽で培ってきた自分の力が違った形で表現出来たし、そこで得た物は確実に音楽に還元出来る。
ミュージシャンで役者って、先入観も最初はあるのかもしれないけど、俺はまた機会があったら是非演劇の舞台にも立ってみたいと思う。
音楽人だからこそ出せる空気感をまた舞台上にぶつけられたらいいなって思う。

この連載を通じて、ひとりでも多くの音楽ファンが俺と同じように似て異なる、だけど共通項いっぱいの演劇の世界に興味を持ってもらえたらと心から願ってます。

ここまでお付き合い下さって、本当にありがとうございました。

さて、「綴っていいとも!」、俺からのバトンは先日新メンバー加入を発表したAYABIEのインテツさん にお渡ししたいと思っています。
WING WORKSのライブでも共にステージに立ってくれている、俺のお兄ちゃんみたいな大切な存在です。
カメラが趣味のインテツさん。
きっと連載もにぎやかな感じになること間違いないので、俺自身本当に楽しみです。

本日新しい未来に向かうことを発表した、この貴重な機会をくれたSatoくん、締め切りを守れない俺にいつも優しく連絡をくれる担当のTさん、本当にありがとうございました。

そして何より、ここまで読んでくれたみんな、本当にありがとう。
これからも一緒に羽ばたこう。

RYO:SUKE