【第9回】村田一弘という男

(更新日:2014.10.21)
そんなある日、私のもとに朗報が飛び込んで来た。
「A組の石田さんが村田君の事かっこいいって言ってたよ」と。
石田さんは女子バスケットボール部に入っていて、
体育館の状況によっては隣のコート同士で部活を行う事もあったので、
可愛らしい顔をしていた事は知っていたのだが、
もちろん話した事はなく、彼女に関する情報は皆無に等しかった。
向こうからしても同じ状況だったと思うが、
そんな情報を聞かされては意識しないようにする方が難しく、
むしろその瞬間から私の方が好きになってしまっていたような気さえする。
なぜなのだろうか、
少しばかりそんな雰囲気の事を言われただけで、
すぐに心が反応してしまう年頃だったとでもいうべきなのか。
とにかく思春期の少年にはとても嬉しい出来事であり、
翌日から学校へ行く上での楽しみが増えた事に間違いはなかった。

それからというもの無駄にA組の教室を訪れてみたり、
隣同士で部活を行う日があれば、ついつい意識してしまったりと、
完全にこちらの方が好きになってしまっていたので、
友人に協力してもらい放課後に告白する事にした。
その日の授業が終わり、
各部活へ向かう生徒や、帰宅する連中の波がひとしきりおさまったころ、
所定の場所に行ってみると、友達を連れた石田さんの姿があった。
向こうもこちらに気づくと、まわりにいた友達がすっとその場を離れ、
二人きりの状況になった。
告白自体初めての事で、当然緊張もしていたので、
単刀直入に「好きです、付き合って下さい」と伝えただけだったと思う。
その言葉を発するのにすごく時間がかかったような気もするが、
他の事を考える余裕などなく、ただ決めていたそのセリフを吐き出すので精一杯だった。
そんな私の様子に影響されてか、向こうも恥ずかしそうにしながらOKの返事をくれた。
ほっと胸を撫で下ろした私は、後ろで隠れていた友人に小さくガッツポーズをした。

これが私の青春の1ページであり、人生初告白のシーン。
その後一緒に映画を見に行ったり、まだ携帯を持っていない時代だったので、家の電話にかける(お父さんがでたらどうする?!)という緊張感を味わったのもこの頃だった。
結局数ヶ月程付き合って別れてしまったが、とても懐かしい思い出である。

中学2年になり、夏の大会で先輩が引退すると、
我らがバスケ部もいよいよ自分達の天下到来といった感じになる。
それまで教室で着替えていたのが部室に代わり、ロッカーも使える様になった。
練習では当然責任も生まれ厳しくなっていくのだが、
それでもやはり先輩がいないというだけで楽しさは倍増した。
そんな環境に伴ってか、最初の夏に行われる市の大会でいきなり優勝してしまったのだ。
私も背番号『6』を背負いレギュラーとして奮起していたので、これは嬉しかった。
最初の大会なので当然チームとしてはまだまだ未完成な状態であったが、
経験者が豊富だった事もあり、個々の能力で勝てたように思う。
当時は嬉しさに皆テンションが上がっていたが、後にこの結果が大きな災難を招く事になるとはまだ想像すらしていなかった。。
市の大会で優勝すると次は都大会へと駒を進める事になる。
ここからはトーナメント戦になり、一度でも負ければそこで終了となる。
初戦の相手は立教中学。
会場に着き、相手チームの様子を見てみると、明らかに様子がおかしい事に気づいた。
中学生の大会で身長190cm超えのメンバーがいたのだ。
それだけならまだしも、他の各ポジションのメンバーが全員私よりも背が高く、そして上手かった。
こっちはせいぜい150cmから高くても170cm程のチームであるのに対し、その差はあまりにも大きかった。
後でわかった事だが、中学からすでに推薦で選ばれた精鋭揃いであったようだ。
無論そんなチームに敵うはずもなく、
あっさりとダブルスコアで初戦敗退となった。

次週へ続く~

☆あとがき☆
ついに20本超えのツアーがスタート!!
初日初台DOORSにて盛り上がってくれたみんなありがとう!

riceがお近くの町を訪れた際には是非ともご贔屓に♪
ツアーの詳細はrice.jpをご覧下さい☆