【第4回】 「魔がさす」:Q

(更新日:2012.11.24)
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」、公開初日に観てきましたとも。
ツイッターにもブログにも書いてなかったので、そうなんだ~って感じですよね。
いかなる感想も批評も予備知識も無い状態で楽しみたかったので、公開してから自分が観に行った夜の回までの間、インターネットに触れるのが本当に怖かったのです。
だって絶対にいそうじゃん。「●●が●●でびっくりしたーー!!」とか「XXがこうだったー!!」とかつぶやく人。「前作『破』、前々作『序』と比較して良かったor悪かった」すら情報としてシャットアウトしたかったので。

だもんで、自分がされて嫌なことは人にもしないっ!の精神でエヴァに関しては「ダメです。完全に沈黙を守って」いた自分です。感想も一切言いませぬ。アルバム完成したらもう一回は必ず映画館に足を運びたいです。
本当に素晴らしいですよね。チケットをひとつの作品を楽しみにたくさんの人が同じ時間、同じ場所に集まってドキドキしながら何かを待っているのって。
WING WORKSのライブもそういうものになるように気合を入れて臨もうと思います。

さて、前回の連載ではファン旅行についてだったので中断していた10月の舞台「魔がさす」についての続きです。
まだたった先月のことだったなんて信じらんねー。
前々回では主に演劇の基礎的なトレーニングがいかに自分にとって新鮮で目から鱗なものであったかについてでした。

そんなこんなで徐々に「役者」としての感覚を知りはじめた自分だったけど、いよいよ台本をもらっての本格的な稽古に入ることになります。
物語の舞台は映画やドラマの撮影所にある「大部屋と」呼ばれる楽屋で、駆け出しの売れない役者さんたちが集まる現場でした。
いわば、ショーアップされた世界のリアルな裏側。俺が生きる音楽の世界に通ずる部分でもあり、この舞台に出演するお話を頂いた時に一番魅力を感じる部分のひとつでもありました。

俺に与えられた役は、そんな掃き溜めのような場所に東京からやってきた「倉田清十郎」という名前の大物若手俳優スターでした。
付き人や自分より立場の下の人間にはいつも横柄に振る舞い、撮影現場では意見の食い違いで監督と大ゲンカはするし、しまいにはなんの物怖じもなく女性スタッフや共演者に手を付ける、そんな男の役でした。

舞台の稽古は、まず「読み合わせ」という作業から入ります。
これはその名のとおり、まだ動きの演技はなく、役者の声だけで台本を読み進めていくもの。
俺にとっては緊張の、人生初の「演じる」瞬間でした。

倉田はある程度物語が大きく動いてからの登場だったので、俺は共演の役者さんたちの芝居を観察することが出来たんだけど、これがマジですげー。
俺が観客としてずっと知っていた役者さんも多かったので、まさに「あの時の舞台に出ていた本物だ!」と思わざるを得ない、迫力のある芝居が声だけの段階で早くもやりとりされてる。
さっきまで和やかに一緒にストレッチをしたり発声練習をしていた時の雰囲気から一変、稽古場の空気が一気に「大部屋」そのものに変わるショッキングな瞬間でした。

自分だったら、ライブ当日に会場入りして、リハーサルをしてその日の音を確かめて、メイクをして衣装を着て、ステージ袖に移動してSEがかかってステージに上がるその瞬間まで、徐々に色んな段階を経てからその日のライブにモードを切り替えていく。

そのスイッチの切り替わりの触れ幅が、役者って何も無いところからここまでダイナミックに起きるんだってことが衝撃的でした。

そんな中、物語は大きく展開して、いよいよ倉田清十郎の登場。
とにかく自分なりに一生懸命、台本の台詞を発してゆきました。
そして、緊張の初読み合わせが終わって、脚本演出の主宰が俺にひとこと。
「リョヲ丞、ガチガチだったねえ。」

俺はまだまだ倉田清十郎でもなんでもない、ただの緊張しっぱなしの俺でした。


てな訳で、いよいよ本格的になってきた俺の演劇ライフ。
ここからがもっとも濃厚で刺激的な日々の連続です。連載もますますヒートアップ!!
もはや「もしもヴィジュアル系バンドマンが演劇『魔がさす』に出演したら?」というタイトルにしてもいいんじゃないでしょうかこの連載。

来週も、サービス、サービスぅ!!