【第13回】Guitarと想像力

(更新日:2013.11.19)
月に何回くらい、書店に足を運んでいるだろうか。
昔と比べて、行く機会が減ってしまった。
単純に断捨離(連載第7回参照)の実行により
漫画をほとんど購入しなくなった事も
原因の一つだが、
街から書店の存在自体が、
消えつつある。

出版不況が叫ばれる中、
加えてネット流通と電子書籍の発展が、
リアル書店(※1)を年々減少させているのではないか。

雑誌や書籍は、
知識と知恵、『想像力』を提供してくれる。
リアル書店の良さは、本との出会いだ。
ネット通販、電子書籍は買う本が
最初から決まっていないと、
なかなか利用出来ない。
漠然と何かしらの本が読みたいと思った時、
店頭で初めて『未知』の本と出会うことが出来る。


そんなリアル書店で懸命に働く人達のドラマを
描いた漫画作品がある。
いわしげ孝氏の『上京花日』だ。



俺はこの漫画が大好きだ。(※2)

主人公は、新刊書店チェーンで働く中年・貫太郎。
ヒロインであり、アルバイト店員の佐藤花や、
万引きの発覚から急遽働く事になった高校生、
出版社の営業部員、人気作家の編集者など、
魅力的な登場人物に支えられ、
貫太郎たちの働く書店『ブックスサンフラワー』の姿が、
リアル書店の大切さを教えてくれる。

作中に出てくる台詞も興味深い。
中でも俺が一番気に入っているのは、
小説家の篠原泉が数年振りに帰郷し、
「不易流行(※3)、これは唯一あんたに教わったことだよ」
と父親に言い放つシーンだ。

一冊の『本』『漫画』『小説』『雑誌』から
産みだされる人の想い、
そしてマーケティングや商品戦略の成功を度外視した、
書店の本来あるべき姿が、熱く描かれている。


2013年10月30日、
『上京花日』の最新刊である、
第7巻が約2年振りに発売された。
作者のいわしげ孝氏が病気療養のため
長期間執筆を休載していたが、
闘病の果て、
今年の3月に他界され、
この第7巻が遺作となってしまった。
掲載を楽しみにしていた
『上京花日』は、未完のまま幕を閉じた。

物語はクライマックス直前だった。
本当に続きが読みたい。
しかし物語の未来を『想像』することは出来る。
これはゲーム等の娯楽では絶対に起こりえない、
本の特権とも言える。


地元の駅の本屋さんが、
つい先日、閉店した。
いつも親切に対応してくれた記憶が蘇る。
だが『ブックスサンフラワー』の書店員達と
同じように書店、本を愛し、
今も本屋で働いている人達は、
まだまだたくさん、現実に存在しているのだ。
リアル書店で本を購入することを大事にしたい。
この作品で『想像』する喜びと
その大切さを改めて気付かせてくれた
いわしげ孝氏に、
心からの感謝と
追悼の想いを
新たにしています。



自分の未来を『想像』すると、
隣に最高のヴォーカリストがいて、
自分の楽曲を演奏している。
それしか『想像』出来ない。
その『想像』を現実にしたい。
新しい、温かい卵。
今、俺の手元で静かに眠ってます。



最後に次のバトンをまわす方をご紹介します。
kannivalismのベーシスト、
裕地さんです。

出会いはもちろん、WING WORKSの、
Live Member WING-MENとして。
kannivalismさん、俺もよく聴いています。
『life is.』という楽曲が、広末慧のお気に入りです。
この世界観はkannivalismさんだけのものだと思います。
是非、皆さんにも聴いていただきたい1曲です。


裕地さんは超優しい先輩です!!
ベーシストとしても、作曲家としても
大尊敬するミュージシャンのお一人で、
今後も一緒にステージに立てる機会があることを、
光栄に思います。



今後の連載、よろしくお願いします。

そして毎回原稿に快く対応してくれた
新星堂オンライン担当のCさん、
何より読んでくれた皆さん、
3ヶ月間、ありがとうございました。



(※1)実際に店舗を持ち、
本や雑誌を並べて販売している、いわゆる一般的な本屋。
オンライン書店と区別をする際に使用される。

(※2)新刊が発売される度に購入する作品は、
『ピアノの森』『ジョジョリオン』『上京花日』の3作品。
連載を始めた当初から、
この回を最終回にしようと考えていたため、
連載第7回の注釈に『上京花日』を書いていません。