【第8回】「倉田清十郎という男:其の三」

【第8回】「倉田清十郎という男:其の三」

(更新日:2013.1.9)
地球の皆さんあけましておめでとうございます。
2013年、いよいよスタートしましたね!!今年はマジでガチでWING WORKSを何卒よろしくお願い申し上げます。

俺の今年のお正月は普段となんら変わりのない、曲を作ってデザインをしてなどの通常業務で過ごしました。
思えば、自分にとっての一区切りは年の切り替わりではない部分にあるので、「さあ今年はこれで仕事納め!今年も終わり!」みたいな風には感じられなかったというか。

とは言え一年の計は元旦にあり。
この2013年を自分にとってどんな年にするべきか、俺なりに考えました。

去年は本当に色々なことが自分にありました。
アルバム「WORLD end's GALAXY」のレコーディングにはじまり、23日連続ライヴ、前所属事務所からの独立、無期限活動休止の決断、イベントライブの日々、数年ぶりの全国ワンマンツアー、グランドファイナル赤坂BLITZを含む2本の追加公演、WING WORKSの起動、舞台「魔がさす」での役者デビュー、アルバム「STAR GAZER NEMORY」と「メトロア」のレコーディング。
信じられないくらい数多くのターニングポイントがある一年でした。

それを踏まえての2013年。
漢字一文字で表すなら、「尖(とがる)」一年でありたいと強く思います。
去年経験したすべてのことを鋭い一点に集中させて表現してゆく。
そして、それが自分の中の次の次元まで貫ききるまでやり切る。
そんな一年にしたいと思います。
自分の持てる力のすべてをWING WORKSという一点に脇目もふらずに注ぎ込む、そんな一年にしたい。

今年もどうぞ俺のことをよろしくお願いします。


さて、長きに渡ってお送りしている舞台「魔がさす」のお話。
前回は、「倉田清十郎」というダークヒーローになり切れない自分の葛藤の日々と、突如として脚本演出に指示された「共演の役者さんと向かい合って3分間ただ見つめ合う」という突拍子もない訓練のはじまりについてでした。

という訳で俺はとある稽古の最中に、倉田清十郎が常にぞんざいに扱ってる付き人「鶴岡」役の役者さんとパイプ椅子に座って向き合いました。
距離的には膝と膝がぶつかるスレスレのかなり近い間合い。

「では、はじめ。」
演出家がストップウォッチのボタンを押して、「見つめ合う」時間がはじまりました。

これが、マジでスゲー。
3分間なんてあっという間なのかなと思っていたけど、これが信じられないくらい長く感じられるし、とにかく相手が自分のことをただひたすら見つめてくるって実はありそうでなかったことだとはじめて気付かされました。

普段誰かと会話をしていても、人は精神的にプレッシャーを感じすぎないように無意識に視線は外しながらコミュニケーションを計ってる。でも、それが一切不可能な状態。
今自分が感じている相手への緊張、芝居に対する迷いや自信のなさ、ひいては俺っていう人間そのものが見透かされているような気がしてきて、今すぐ椅子を蹴っ飛ばして逃げ出したい衝動に必死で耐え続けました。

だけど、徐々に別の感覚がふつふつと俺の中に芽生え始めるのを感じました。
「鶴岡」役の役者、中大雅くんもひょっとして俺と同じこと考えてるんじゃないのか?
そう思うと、なんだか不思議な感覚がどんどん心を大きくなってきました。 自分が自分でないような、自分と相手の境界があいまいになってくるような、不思議な一体感。

その状況で演出家がこう言いました。
「じゃあ、○○のシーンの台詞を二人で芝居してみて下さい。」
言われるままに、その見つめ合った状況の中で台詞をやり取りし始めました。
すると、また新しい感覚。
俺は完全に今まで舞台で見ていた役者さんとではなく、自分よりも立場が下の付き人に対して語りかけていました。

間違いなく、「倉田清十郎」として「鶴岡」と向き合うことの出来た瞬間でした。
あれほど自分の中で共通項を探し、近づこう近づこうと思っていた「倉田清十郎」は自分の内側ではなく、今目の前にいる人との関わりの中で自分の中に生まれるものだと理解出来たのです。

そして同時に思ったのは、ライブのこと。
まさしく自分と相手の境界が解かれてひとつになるあの感覚を、俺はもう幾度となくライブの空間でメンバーやオーディエンスと一緒に経験してきたし、それは何物にも変えがたい幸せな時間であること。

演劇もそれと一緒で、共に板(演劇の世界ではステージのことを「板」と呼びます)に立つ役者同士がひとつになって作り上げて行くこと、そしてきっとまだ見ぬ観客の皆さんたちとも一緒になってその物語、その空間を作り上げてゆくものなのだということ。

手法は様々あれど【表現】というものの本質に触れられた気がするこの瞬間に、俺はようやく「倉田清十郎」と真正面から向き合うことが出来ました。


さてーーーーーーー!! ようやく「役者は揃った」感のある舞台「魔がさす」。
舞台本番までもう少し。倉田清十郎を見つけた俺の目の前に立ちはだかるのは「舞台」と「観客」という、新たな世界でした。

来週も、サービス、サービスぅ!!